私の主宰する話し方教室では、「人前で話すのが苦手です」「あがり症を改善したいです」というご相談をよくいただきます。
そんな時、私はすぐにアドバイスをしないようにしています。
なぜならば、最初に伺った悩みと、本当に困っていることが違う場合が少なくないからです。
例えば、「声が小さいことで悩んでいます」と言った方がいました。
最初は発声の問題かと思いましたが、詳しくお話を伺うと、機械音が鳴り響く職場で、5~10メートル離れた場所にいる人とコミュニケーションを取る必要があるとのことでした。
静かな会議室での会話と、機械音が響く職場で遠くに声を届けることでは、求められる声の出し方がまったく違います。
また、「意見を言う時に話がまとまりません」という方もいらっしゃいました。ところが話をよく聴いていくと、話をまとめる力が不足しているのではありませんでした。
周りの人と自分を比較し、「あの人の方が、話が上手だ」「自分はうまく話せていない」と頭の中で自分を責めながら話していたのです。
さらに、「人前でのあいさつに失敗しました」という方もいました。しかし、よく訊いてみると、実際に失敗した出来事があったわけではありません。緊張して胸がドキドキしたことを、「失敗した」と解釈していただけだったのです。
こうした経験を通じて感じるのは、表面に見えている悩みと、本当の原因は違うことがあるということです。
だからこそ、思い込みで判断せず、まずは丁寧に話を聴くことが大切なのだと思います。
もし今、何かに悩んでいるなら、一度立ち止まって考えてみてください。
「本当に困っていることは何だろう?」その問いを自分自身に向けてみるだけでも、新しい発見があるかもしれません。
また、人は自分の悩みを正確に言葉にできるとは限りません。
だからこそ、家族との会話でも、職場での部下指導でも、まずは相手の話に耳を傾けることが大切なのだと思います。
私はこれからも、話し方だけでなく、「聴く力・訊く力」も大切にしながら、一人ひとりのお話に向き合っていきたいと思います。


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